レオニスの泪
月明かりが、無償に悲しく見える。
「ねぇーママぁー、今日ねぇ、サナエちゃんがねぇ今度の劇のお姫様役になったんだよぉー」
それ以外の空が真っ暗で、自分がおいてけぼりを食ったかのような気持ちになるから。
「そうなんだ、サナエちゃん喜んだでしょう。慧は何役になったの?」
自転車を走らせながら、ヘルメットを被って後部座席に座る慧に問い掛けた。
「えっとねぇ、ぼくはねぇ、フクロウ!」
「フクロウ?どんな役なの?」
「んっと、お姫様が迷い込んだ森の中の木に止まってるの!」
元気良く答えた息子に、複雑な心境を抑える。
「慧はフクロウになりたかったの?」
「うん!」
「…そう、良かったね!」
一応笑顔を作る。
「だから、ママ絶対観にきてね!」
「―へっ!?」
―しまった、素っ頓狂な声が出てしまった。
「ママ…?」
「あっ、うん!わかった!楽しみにしてるねっ!」
不安そうに自分を呼ぶ慧に、なんとか平静を取り繕った。