レオニスの泪
「―責める?」



考えたこともない言葉に、私はパチクリと目を瞬かせた。



「自覚、ないんだね。」



神成はまた柔らかく笑う。


どうも、笑うのは癖のようだ。


いや、よく見てみれば、別に笑ってなくても笑っているように見える顔だ。



―あれ、じゃ本当は笑ってないのかな。



会話中だというのに、意識は別の事に飛んでいた。




「これからどうやって治療していくか、だけどね。まずは君にとことん話してもらう。最終的に目指す所はまだ言わないけれど、最初は呼吸を治そうね。」




片手に持った万円筆をくるくると回し、神成は淡々とした口調で続ける。

私はそんな彼を期待の籠もった視線で見つめた。




「苦しくなった時、それは当たり前のことなんだと思っていて。またなるんじゃないかと不安になる必要はない。なって当たり前。」




「そんな…」



―なんだ、その方法。



落胆したのが、ばっちり表情に表れる。





「そう、当たり前なんだよ。それを受け容れて。」





そんな私を見て、神成は強調するように頷いた。
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