レオニスの泪
カルテⅡ






苦しくて泣きたくなる夜はいっぱいあった。



拭えど拭えど、頬を涙が伝っていって。



涙逃しを試みるけれど、到底無理な話で。



最終的には起き上がってタオルをもってきて。




漏れる嗚咽で、隣で眠る息子を起こさないように、外に出る。







精神科を初めて受診してから一ヶ月程経った夜も。


やはり、同じように胸が苦しくなって。


着の身着のままで、夜道を歩く。


午前零時辺りだとまだ学生や、ジョギング、ウォーキングをしている人達をちらちらと見掛ける。


緩いシャツに、タイツを履いて、歩く私も、そんなに変じゃない筈だ。



じわじわと目尻に溜まる涙だけ別にすれば。



片手には、吸収性の良いタオルを握っている。



夜というのは不思議なもので。


何故だか心が静かになるようで、気分が落ち着く。



ぼんやりと月明かりを目にするだけでも、ぴたりと涙が止まる。



どうして、泣けてくるのか、理由はわからないから、何がどう解決して涙が止まったのかは、知りえない。


謎だ。



但し、昼間、私が過呼吸以外で涙することは、ない。


多分だけど。


普段出せない悲鳴が、静かな夜に、自分の内を暴れるから、私は昼、光の下で泣かなくて済むんだろう。


その分、真夜中にお返しがやってくるという訳だ。



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