レオニスの泪
ぺら、ぺらり。
2DKの借家。
寝かしつけた慧の脇で、保育所の連絡帳を捲る。
「保育参観…忘れてた…」
お風呂に入って、スウェットだけ身につけて、濡れた髪もそのままに、項垂れた。
バスタオルを巻いていても、若干肩の辺りが湿る。
手紙も配布されていたようだが、今となってはどこにいったのか分からない。
親切な先生が、慧の連絡帳に記入してくれていなければ、日付すらもわからなかっただろう。
だが。
「今週…土曜日…」
休みの申請をしていない。
そして、恐らく平日一回と日曜しか休みのない、あの職場。
上司の顔と、慧の顔が交互に浮かぶ。
「明日、言うだけ言ってみるか…」
はぁ、と溜め息を吐いて、最愛の息子の寝顔を見つめた。
「ごめんね、こんな母親で。」
呟いた言葉が、自分の中に積もっていっているなんて、自覚もなかった。