レオニスの泪

「何の冗談ですか?そんなの、無理ですよ。」


神成が冗談を言っている訳ではないことは、はっきりとわかっていた。

けれど、言わずにはいられなかった。


「やらなきゃいけないことが次から次へと出てくるんです。毎日ゼロにできればまだいいですけど、積み上がっていくばかりで、全然減らないんですよ?それに、仕事以外は子供とずっと一対一なんです。相手をしながら、ただでさえ手が遅くなるのに、変わらずに仕事はある。それが終わらないのにどうして自分の時間なんて取れますか?そんな時間があるなら、寝たい位なんですよ?」


なのに、眠れない。

悪循環だ。


ついついキツい視線で、神成を見てしまう。


だが、神成はやはりいつものように、笑んでいるような、いないような、穏やかな表情を浮かべている。


「それでやっていけるなら、僕は構わないよ。」


落とされた言葉は、短かかった。


「ーえ?」



思わず訊き返してしまうほどに。


「今までもそうやってきて、そしてこれからも、君はそうやっていくつもりなの?」
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