レオニスの泪
「そうか。祈さんにとったら、これは、手を拭く為のものなんだね。」


自分の答えを繰り返されると、更に小馬鹿にされているようで、むしゃくしゃするが、今は我慢して、神成の話を聞くことにする。


ー話の内容に寄っては、大学病院宛に苦情出してやるんだから。


予想できる結果に怒りが溜まって、文句を言う体制を整える為、体内のアドレナリンが活発化している。

つまり、心拍数が上がっている。



「確かに、手を拭く際、ハンカチは便利だよね。あと、咳が出てしまった時、エチケットとして、口にあてる時にも使うね?」


「…ええ、まぁ…」


静かな診察室で、静かな口調の神成。

自分の暴れる心音が場違いに思えてくる位だ。



「それじゃ、怪我をした時は?」


「ーえ?」





神成の視線は、今、自分の手元のハンカチに向けられている。




彼はそれを三角に折ると、端からくるくる巻いていく。




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