レオニスの泪





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「笹田さん!イケメン先生の顔はもう拝みました!?」



調理場の奥で作業していても、聞こえてしまう、嫌な声。



私は、調味料を混ぜ合わせる泡立て器の動きは止めずに、そっと笹田に目をやった。


「まだよー!遠いんだもの。患者にでもなれば、見れるんでしょうけどねぇ!」



笹田はいつものようにやかましく、大きな声で森に話掛けている。


そういえば、少し前に、森が騒いでいたような気がする。


4月から赴任してきた新しい精神科の先生は、ナースが選り取り見取りとかなんとかって。


一体誰なのかは知らないが、森のしつこさを見れば、さぞかし羨ましいんだろうと思う。


そんなイケメン、私だって出くわしたことがない。



独身者は。




ー神成先生は、多分、相当イケメンかな。



童顔は自分の好みではないけれど。



「そんなにオススメなら、名前だけでも覚えておこうっと。えっと、、なんだったっけ?この歳になると直ぐ忘れちゃうのよー」


ケラケラ笑う笹田が、カウンター越しに、森の肩をバン、と叩いた。
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