レオニスの泪
もう、聞き捨てならない。

私は、作業をする手を止めてー実際は既に終わっていたがーカウンターの方へサッと歩み寄る。



「あの、森さん…どれくらいその方と親しいのかわかりませんが、、神成先生が、その…既婚者だったとしたら、どうするんですか。そういう無責任なこと言うの、やめた方が良いと思いますよ。」



テカテカ光る、森の脂っこい顔を見つめ。

隣では、笹田がなんだこいつは、と言う目で私を見ている。


だが、今回の森の身勝手な憶測、というか、言い分には腹が立つ。

これでは、神成が独身者のように聞こえるではないか。


奥さんが可哀想だ。


なのに、森は一瞬きょとん、としただけで。




「葉山さん、そーんな怖い顔してたら折角の美人が台無しですよ!」


真剣に言っている私に対し、直ぐにヘラヘラ笑い出した。



「だーいじょうぶですって!俺だって根拠なしに色々言ってるわけじゃないんですから。神成伊織先生は、ちゃんと独り身です。ついこないだだって他県から来た女医さんお持ち帰りしてましたし!」



ーへ?


今度きょとんとするのはこっちの方だった。



「こう見えて俺、かなり情報網広く取り扱ってるんですから。信頼してくださいね!」


森が相変わらずなでかい声でドヤ顔を披露した。
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