バレない嘘をついてよ。

この部屋からだ。
そこは、図書室だった。



私は音を立てないよう、少しドアを開け中の様子を見た。



「……カズキ、帰らなくていいの? 彼女さんが待ってるんじゃないの? 」

「別にいいよ。どうせ、先に帰ってるだろう」



言う言葉が失った。


この光景を見れば分かる。
カズキは浮気していた。



重なり合う唇。
啄むようにキスを何回も何回も……





今すぐ止めたかった。
けど、怒りよりも悲しみが大きかった。


私とカズキは、
まだキスをしていなかった。


……なのに、
浮気相手とキスをしてる。






あんなに優しかったカズキは、
いったい何だったの?

あの笑顔は、全部作り笑い?





裏切られた。
心が重くなっていく。




私の頬から、
暖かいものが流れ落ちた。

< 107 / 222 >

この作品をシェア

pagetop