バレない嘘をついてよ。
この部屋からだ。
そこは、図書室だった。
私は音を立てないよう、少しドアを開け中の様子を見た。
「……カズキ、帰らなくていいの? 彼女さんが待ってるんじゃないの? 」
「別にいいよ。どうせ、先に帰ってるだろう」
言う言葉が失った。
この光景を見れば分かる。
カズキは浮気していた。
重なり合う唇。
啄むようにキスを何回も何回も……
今すぐ止めたかった。
けど、怒りよりも悲しみが大きかった。
私とカズキは、
まだキスをしていなかった。
……なのに、
浮気相手とキスをしてる。
あんなに優しかったカズキは、
いったい何だったの?
あの笑顔は、全部作り笑い?
裏切られた。
心が重くなっていく。
私の頬から、
暖かいものが流れ落ちた。