バレない嘘をついてよ。
「何よ……」
「いや、佐伯ってそんな人だったけなって思ってさ。……何か俺、スッキリしちゃったな」
笑う叶。
さっきの浮かない顔が嘘みたいだ。
「なら良かった」
「あぁ。……佐伯も何か悩みとかないの?」
「えっ……? 」
「電車の中とかで、たまに辛い表情を見せてたからさ」
バレてたんだ。
私はうつむいた。
「次は佐伯の番。話してごらん? 」
叶の優しい声に思わず、小さな雫が落ちた。