バレない嘘をついてよ。
【一八side】

「痛っ‼︎ お前、力強すぎーー」


佐伯に言いかけたとき、
俺は佐伯の様子が変なことに気づいた。


「……佐伯? 」

「何にそんなに怒ってるの? ……目も合わせてくれないし、返事もしてくれないし」


かすれた声が聞こえてくる。


「泣いてんの? 」

「泣いてない」


鼻水のすする音が聞こえる。



「泣いてんじゃん」

「泣いてないってば! 」

「じゃあ、顔見せろよ」

「目も合わせてくれない人に、言われたくない」




佐伯は手で、
涙と思われるものを拭った。



「……悪かった」

「へっ? 」



佐伯は、驚いたのかうつむいていた顔を上げた。


目は真っ赤だし、涙目になってるし。
頬には涙が流れた後がある。



「やっぱり、泣いてんじゃん」

「泣いてないし」




佐伯はそっぽ向いた。



「嘘をつくなら、バレない嘘をつけよ」




強がりな佐伯が、
段々可愛く見えてきて思わず笑ってしまった。


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