バレない嘘をついてよ。
「何、笑ってんのよ」
「何でもない」
ムッとした顔の佐伯が、
小さな子どものように見えてきた。
「そういえば、俺に何か用でもあったのか? 」
「うん。……この前はごめん」
「何で、お前が謝るんだよ」
「だってーー」
「別に謝らなくていい。……俺の方こそごめん」
謝るという行為が久しぶりすぎて、妙に緊張してしまった。
こんなの小学生以来だ。
今まで俺は、逆に謝られる側だった。
だから妙に照れくさかった。
「……うん」
「じゃあ、仲直りってことで! 」
俺は笑った。