バレない嘘をついてよ。
ーーガチャ
不意に開く扉。
扉に目を向けると、
背が高くて茶色の毛先がはねてる髪。
「夜神……」
「あ? ……佐伯か」
夜神の顔を見た瞬間、
思い出す葯伊江の顔。
「どうした? 」
「な、何でもない」
私は夜神から目をそらした。
本当は、
聞きたいことがある。
けど……聞ける勇気がなかった。
もし言ったら、葯伊江はどうする?
考えただけで身体が震える。
「チッ……何だよ」
「えっ? 」
「嘘つくの下手くそなんだよ、お前は。本当は何かあったんだろう? 」
真剣な眼差しを向けられ私は戸惑った。
”言ったら楽になるのじゃないか”
って思ったりもした。
でも、言えない。