バレない嘘をついてよ。


次の日の昼休み。


俺は佐伯のクラスに行った。



けど……





「梓なら、今日は来てないけど」

「……分かった。ありがとう」





来ていない……か。






”来ていない”



ただそれだけ。
そうだ、それだけのことなんだ。




でも何でだ?
こんなに焦っているのは。



不意に
佐伯の嘘笑いの顔が頭に浮かぶ。





はぁ……

この感情は久しぶりだな。


誰か1人のために、
こんなにもイラついたり
悩んだり焦ったり。




ふと、
あの人を思い出した。


黒髪のロングヘアに、
甘く優しい香りがするあの人。




「ダメだ……」




俺は胸をぎゅっと抑えた。

あの人を思い出すと、
胸が締め付けられ苦しくなる。



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