バレない嘘をついてよ。
小さな音を立て、
少し開いたドアの隙間から教室を覗いた。
俺はいつの間にか、
誰もいない校舎の裏にいた。
俺の頬から、
生暖かいものが流れた。
「あれ、夜神? 」
「あ? ……あー、奏か」
「泣いてんの? 珍しいね、夜神が泣くなんて。 嫌なことでもあった? 」
俺は涙を拭った。
「うっせ」
「どーせ、あずちゃんのことでしょ? 」
「……そうだよ」
「やけに素直じゃん」
心にぽっかり穴が空いた気分。
「佐伯と……葯伊江がキス……してた」
「んで、逃げてきたんだ」
「っ……! 」
そうだ。
俺は逃げたんだ。
葯伊江は危ないと知っていたのに……