バレない嘘をついてよ。
「本当は、彼女なんかいない。だからどうするか悩んでたら、お前に会ったってわけ」
「私、そんな子供みたいな争いに巻き込まれたんだ」
……情けない。
……くだらない。
さっきの顔が頭に浮かんでくる。
あの時、本当にもうダメだと思った。
だって周りには聞こえてなかったかもしれないけど、彼は小さく言った。
”早くうんと言えよ。さもないと、その綺麗なお顔がどうなるか分かってるよな?”
そう言われた。
誰にも聞こえないように。