【完】向こう側の白鳥。
後ろに先輩がいないことを確認して、その場にうずくまった。
美術室の前だった。
枯れるほど泣いたのに、涙はまた零れる。
一ノ宮先輩と話したのは、あの日以来だった。
散々泣きまくった、真実を知ったあの日。
放課後は部活に出向いて、いつも通り過ごした。
いつも通り絵を描いて、いつも通り菜子ちゃんの話を聞いて、
いつも通り一ノ宮先輩と帰路を歩いた。
『また明日。』
先輩が口にした言葉が酷く胸を突いて、部屋でまた泣いたのを覚えてる。
枕がぐっしょり濡れるほど泣いて、泣いて……。
次の日からは徹底的に、一ノ宮先輩を避けた。