【完】向こう側の白鳥。
先輩が声をかけてくる度に泣きそうになる。
その度に私は涙を堪えて走り去る。
一ノ宮先輩が好き。
でも代わりなんて、私には堪えられない。
どうせ涙を流すのが結果なら、今離れるべきなんだ。
「苦しいよ……先輩……。」
例え、今がどれだけ苦しくても……。
私は先輩の隣に立てない。
きっと、これから一生。
私は一ノ宮先輩の“後輩”。
先輩があんな切なげな顔をするほど愛されてる先輩の彼女。
顔も声も知らないけど、とても羨ましい。
どうして先輩の隣にいないの?
いたなら……私は、正々堂々と貴女に勝負を申し込めたのに。
見えない敵は、あまりにも大き過ぎた。