【完】向こう側の白鳥。
一ノ宮先輩が、私なんかを気にかけて順位を落とすはずがない。
ただでさえ受験生で、成績や内申は大事なのに……。
……もし偶然じゃなくても、その理由に私は関係ない。
きっと、彼女とでも喧嘩したんだ。
きっとそう……。
「……柚子ちゃん。」
暗い雰囲気が部屋を充満しかけたとき、菜子ちゃんが私を呼んだ。
「どうして急に、先輩を避け始めたの? 最近はあんなにも仲が良かったのに……。」
菜子ちゃんが目を伏せる。
先輩の彼女のことは、菜子ちゃんにも話していなかった。
「先輩もだけど、柚子ちゃんだって一ノ宮先輩と離れてから、ずっと体調崩して……。」