【完】向こう側の白鳥。
「今回のテストも、いつも五位以内には入る柚子ちゃんが八位……。」
菜子ちゃんは優しいから、きっと全てを話せば私に共感してくれる。
そうしたら菜子ちゃんは、一ノ宮先輩を責めると思う。
……先輩は悪くない。
悪いのは、勝手に勘違いをした私。
いくら振り返っても、先輩は私に“好き”なんて言葉は言ったことがない。
ただ優しく触れて来て……、私の心を乱して攫うだけ……。
「一度話し合うべきだよ。何か理由があるんだろうけど、一方的に無視しちゃ一ノ宮先輩が可哀相……。」
こういうとき、いつも時を一緒に過ごして来た菜子ちゃんだけど、私より年上なことを実感してしまう。