【完】向こう側の白鳥。
「……もう一度。」
一人ごとを呟き、ボタンの上に指を乗せた。
……と、その時。
「……はい。」
「ふ、ふぇっ!?」
出て来ないと思っていたから、まさかの不意打ち。
「あ、あのっ私! し、しお先輩のか、かかかのじょ、の……っ。」
なんて言うべきか、家に来るまでずっと考えていたのに、今ので全部飛んだ。
しかも、肝心の“彼女”のところで噛みまくり。
それに“しお先輩”って誰、……そこだけでいいからやり直したい。
「……柚子……?」
「せ、先輩……?」
二言目の声が聞こえたとき、その声が一ノ宮先輩のものなことに気づいた。