【完】向こう側の白鳥。
時計を見れば、五時を過ぎていた。
早く帰りたいけど、家は教えたくない。
どうしよう……。
「……家、一人なの?」
先輩を帰す方法を考えていると、少し前を歩いていた先輩が口を開いた。
「え?」
「だから、家、一人なの?」
なんで先輩がそんなこと聞くんだろう。
首を傾げて頷けば、また先輩は口を閉じて。
……結局、先輩は何が言いたいの?
曖昧な先輩の言葉に腹が立つ。
遠回しに言われるのが、一番苦手なのに。
菜子ちゃんのいう一ノ宮先輩の良いところが、益々わからなくなってしまった。