【完】向こう側の白鳥。
「……じゃ、あたし仕事戻るわ。息子は風邪引きのくせに、相変わらず可愛げも無いし。」
スミレさんは空になった皿を下げ、私達の横を通って階段を上って行った。
スミレさん、家で仕事してるんだ……。
私が来たときいなかったのは、多分仕事中だったんだろうな。
「くそっ……。」
怒りの矛先がいなくなってしまった先輩は、まだぶつけ足りない怒りの空気を辺りに撒き散らしていた。
「い、一ノ宮先輩……!」
そう呼べば、先輩の目は私を見るけど……。
「……何?」
凄く、冷たい……。
……そんなにも、先輩は“その人”が好きなの?
怒りが簡単には消費し切れないほど、先輩は……。