【完】向こう側の白鳥。
「はい。」
少し前を歩く一ノ宮先輩に、私より前を歩いて家が分かるの? と思っていたのに。
先輩は家の前に着いた途端、袋二つを手渡して来た。
……なんで一ノ宮先輩が、私の家を知ってるわけ?
「……ありがとうございました。」
疑問を飲み込み、頭を下げて御礼を言う。
本当、もう早く帰ってほしい。
流石に、家に上がらせてとかは言わないよね?
祈りが通じたのか、先輩は「じゃあ。」と言って踵を返した。
「本当にありがとうございました。さようなら、先輩。」
もうしばらく会いたくないです。