【完】向こう側の白鳥。
一ノ宮先輩が風邪で休んで、お見舞い帰りの私が果穂さんに会った日。
あれから私は一度も、果穂さんと連絡をとらなかった。
紙に書いていた電話番号とメールアドレス。
一度目を通して、お姉ちゃんのことだけでも連絡をとるべきだったと思ったけど……。
何故か、ダメな気がした。
果穂さんと連絡をとってしまえば最後。
一ノ宮先輩とのこの関係が、崩れてしまう。
根拠も何も無いのに、そう感じてしまった。
そして先輩と恋人としての一ヶ月間は、正直付き合う前と対して変わりない。
休み時間は短いから会えなくて。
放課後は今まで通り部活で絵を描いて。
帰りは大した会話も無いまま帰路を歩く。