【完】向こう側の白鳥。
……の、はずなんだけど……。
「外、行かない?」
「行きません。」
さっきから一ノ宮先輩はこの調子。
元々一位の先輩だから、そこまで勉強しなくてもそこそこの点数は取れるんだと思う。
鞄から取り出した問題集を一問も解かずに先輩は暇そうにする。
……正直、本気で勉強をしたい私にとっては凄く邪魔。
「柚子ー。」
「ああもうっ!! 先輩っ、そのお菓子あげるから少しは黙って大人しくしておいて下さい!」
ついに、と言うべきか。
堪忍袋の緒が切れてしまった私は、家に来る途中に買っておいたチョコレートの詰め合わせを先輩に勧める。