【完】向こう側の白鳥。
「ん、いただきます。」
本当はスミレさんにと買って来たヤツなんだけど……。
スミレさんは今日、珍しく留守なみたい。
小説家を職とするスミレさんは、殆どの時間を家で過ごす。
この一ヶ月間、何度か家に遊びに来た私だけど、いつも三階の仕事部屋に引きこもっていた。
初めて会った日、
あんなにも窶れているように見えたのは、締め切りの日が近くて本当に窶れていた……らしい。
今日は事務所の人と話があるらしく、私が来たのと入れ違いになってしまった。
置いておこうと思っていたチョコレートだけど、美味しそうに食べる一ノ宮先輩を見れば、これはこれでアリかな……なんて思う。