【完】向こう側の白鳥。








「ふんふん、ふ〜ん♪」





歌を口ずさんだ。



お姉ちゃんがよく歌っていた歌を。





一ノ宮先輩の切ない瞳には、気づけなかった。










――「先輩、今日はありがとうございました。」





一ノ宮先輩はチョコレートを食べて寝ていただけなんだけど、一応御礼は言っておく。





「俺は何もしてない。」



知ってます。





風が、私と一ノ宮先輩の間を通る。





まるであの日。



初めて会った道路の向こう側。





そして、私達の今の関係。





私と一ノ宮先輩の間には、まるで薄い壁がある。



決してその壁は厚くないのに、私にはその壁を壊すことも越えることもできない。








< 175 / 390 >

この作品をシェア

pagetop