【完】向こう側の白鳥。
「白鳥先輩もまんざらじゃないように見えた。紫苑だってわかってたはずだ。……だけど紫苑は今でも、付き合ってなかったと言うんだ。」
付き合ってない……?
お互い、想い合っていることを知っていたのに……?
でもそれだと、スミレさんの言葉と矛盾する……。
「その理由は俺も知らないんだ。いくら聞いても、アイツは答えなくて……。」
『俺が知っているのは、紫苑と白鳥先輩は想い合っていることを互いに知りながら、付き合ってなかったこと。』
『それだけだ。』
どうしてか、わからなかった。
想い合っているのに、付き合わなかった二人の心境が。
私にはわからない。
沢渡先輩はそれだけ言って、煙草の火を消して帰って行った。