【完】向こう側の白鳥。
私はしばらくそこを動けなくて……。
正午のチャイムが鳴ってから、次の用事の約束の時間に間に合うように、足を動かした。
「待たせてごめんなさい、果穂さん。」
「たった二分だから大丈夫だよ。」
今私は、その“用事”へと来ている。
二つめの用事は、果穂さんとの約束……。
お姉ちゃんのことと、一ノ宮先輩のことを聞く為の約束。
話し終えたとき、私の心はもうズタズタだった。
外国にいたから、お姉ちゃんの死を今日初めて聞いた果穂さんは声を上げて泣いて。
お姉ちゃんと一ノ宮先輩の関係を懐かしそうに話していく。
今にも壊れてしまいそうな心を隠して、笑顔でその話を聞いていた。