【完】向こう側の白鳥。
どこかから、花火が打ち上がる音がする。
泣き止んだ私と、相変わらず私を抱きしめたままの沢渡先輩。
私の気持ちを察してか、捻くれている先輩が珍しく一言も話さなかった。
「……一ノ宮、先輩……。」
抱きしめてくれている、沢渡先輩の体温が心地好くて……。
沢渡先輩の腕の中で私は、眠ってしまった。
どこか遠くで、一ノ宮先輩が私を呼ぶ声が聞こえた気がした。
一ノ宮先輩、知っていますか?
浴衣の柄にも、花言葉のように意味があるんですよ。
牡丹や芍薬には“幸福、富貴”
撫子には“優美、笑顔”
桜には“始まり、豊かさ”
そしてツバメには、
“恋を呼ぶ、家庭円満”