【完】向こう側の白鳥。
「そうだ、柚子。お前、今日暇?」
なんてことを考えていれば、突然沢渡先輩にそんなことを聞かれた。
……何だか、嫌な予感……。
「ご、ごめんなさい。今日は菜子ちゃんと約束があって……。」
約束って言っても、ただ一緒に帰るだけなんだけど……。
きっと、それは言っても言わなくても同じだ。
「そんなの知らねえよ。」
嫌な予感はやっぱり命中。
沢渡先輩は力強い手で私の腕を引いて、半ば無理矢理階段を駆け下りて行く。
菜子ちゃんともう一人の男子生徒の姿は、あっという間に見えなくなった。
……というか先輩、一体私を何処に連れて行く気なんだろ。