【完】向こう側の白鳥。
なんて言うべきだろ。
物凄く、知っている道だ。
沢渡先輩に引かれるまま歩けば、何故かいつもの通学路。
もしかして沢渡先輩の家、案外近い……とか?
「ん、着いた。」
沢渡先輩がそう言って指差したのは、近くの十階建てマンション。
ちょっと、待って。
さっきの角を右に曲がればあるこのマンション。
そこの十字路から、私の家、見えてるんだけど……。
「……近すぎでしょ。」
あまりにも近すぎて唖然。
今まで知らなかったことが不思議。
……そう言えば。
いつか一ノ宮先輩との下校中に、あの信号の長い横断歩道のところで会ったんだっけ。
家が御近所さんなんて、考えもしなかった。