【完】向こう側の白鳥。
背もたれに背中を預けて、文字通り寛いでみる。
本当にふかふか。
その時、ある香りが鼻についた。
「この、香り……。」
ゆっくりと、ソファーに寝そべる。
ふわふわ、そして暖かい。
鼻に香る香り……。
「……一ノ宮先輩の、香りだ……。」
「紫苑はよく、俺の家に来ていたからな。」
目の前のテーブルに、カチャと白のカップが置かれた。
余所様の家で寝転ぶなんて失態……慌てて私は座り直す。
その様子に、沢渡先輩が笑いながら目の前のソファーに腰かけた。
テーブルの上のカップからは、甘いお茶の香りがする。
私の大好きな紅茶の香りだ。