【完】向こう側の白鳥。
「沢渡先輩……私、もう嫌……。」
「…………。」
「これ以上……一ノ宮先輩を想いたくない……苦しい。」
沢渡先輩に言っても、無駄なことは分かっている。
私の想いは、私にしか変えられない。
一ノ宮先輩への想いは、私が一ノ宮先輩を忘れるしか……他に無い。
それでも、堪えられない。
私は昔から、一人だった。
幼少期にお父さんが事故で死んで以来、私にはお母さんとお姉ちゃんしかいなかった。
そのお母さんも、医者という立派な職に就いていて、私に構う暇なんて無く。
お姉ちゃんとの四つの歳の差は、私を孤独にさせるのには十分な材料だった。
きっと私が男の人が苦手なのは、お父さんがいないことが原因一つ。