【完】向こう側の白鳥。
そう、……私には、菜子ちゃんと時貴くんだけだった。
お母さんが私を愛してくれていることは知ってる。
仕事が忙しいことも、ちゃんと理解してる。
お姉ちゃんも同級生の人達と遊びたいだけで、私を邪険にしてないことも、知ってる。
知ってる、理解してる。
自分の気持ちはずっと押し込めていた。
“寂しい”なんて感情を、私はいつの間にか持っていたんだ。
初めて感じた一ノ宮先輩の視線。
男の人からの無言の視線なんて、当然嫌だった。
でも、嫌だけじゃなかった。
……嫌だけど、嬉しかった。
私を見てくれる一ノ宮先輩の視線が、私を“一人”から抜け出させてくれた。
「一人じゃない幸せを知った今……一人なんて、堪えられない……!!」