【完】向こう側の白鳥。








――翌日、菜子ちゃんは迎えには来なかった。





久々の、一人きりの登校。



いつも煩く思っていたのに、……いざ隣に彼女がいないとなると、何故か寂しい。





行きつけのスーパーを通り越して。


初めて一ノ宮先輩と顔を合わせた横断歩道の信号を待って。



歩道の信号が青になれば渡って。





何気ない日常。



呼吸をしているだけのロボットのようだ。





通学路の先を歩く、沢渡先輩を見つけた。



元々家が近いんだから、会ってもおかしくはない。





相変わらずの赤髪で、耳にイヤホンを差している。





……声をかけようか迷った。



こういうとき、話しかけるべきなのか。








< 256 / 390 >

この作品をシェア

pagetop