【完】向こう側の白鳥。
――翌日、菜子ちゃんは迎えには来なかった。
久々の、一人きりの登校。
いつも煩く思っていたのに、……いざ隣に彼女がいないとなると、何故か寂しい。
行きつけのスーパーを通り越して。
初めて一ノ宮先輩と顔を合わせた横断歩道の信号を待って。
歩道の信号が青になれば渡って。
何気ない日常。
呼吸をしているだけのロボットのようだ。
通学路の先を歩く、沢渡先輩を見つけた。
元々家が近いんだから、会ってもおかしくはない。
相変わらずの赤髪で、耳にイヤホンを差している。
……声をかけようか迷った。
こういうとき、話しかけるべきなのか。