【完】向こう側の白鳥。
じゃあ、誰?
そんなこと、聞かなくてもわかってしまう。
私の体に残る、大好きな彼の香り。
帰宅部な沢渡先輩は、今日は用事があると言って一層早く帰って行った。
すると、今まで学校にいて私を助けてくれたのは……。
「白鳥を運んだのは、三年の一ノ宮。確か、お前の部活の先輩じゃなかったか?」
何も知らないかっちゃんは平然と言う。
……部活の先輩?
そうだけど、それだけじゃない。
世間で言う、元彼。
そして、今でも私が愛す人。
「白鳥が起きるちょっと前に出て行ったから、今からでも急げは追いつけるんじゃないか?」
鞄を持って、ベッドから床へと足を動かした。