【完】向こう側の白鳥。
正門の向こう。
一ノ宮先輩はいた。
昇降口で靴を履き替えて、急いで足を先輩の方へと走らせる。
……だけど、私の足は止まった。
「最低……っ!! 何考えてるのよ!!」
女の人の喚きと、パンッという乾いた音。
「……桂木先輩に、俺の気持ちが分かるわけない。」
桂木、先輩……?
一ノ宮先輩の頬は赤くなっていた。
「分からないわよ、分かりたくもない! だけど、そんなことをして……梅芽ちゃんが喜ぶとは思えない!!」
“梅芽ちゃん”
あぁ……そう言えば、果穂さんの苗字って“桂木”だったっけ……。
「当たり前だろ!! 梅芽は、梅芽は絶対に俺を許さない……。」