【完】向こう側の白鳥。
私がそう聞く前に、沢渡先輩の言葉が携帯から聞こえて来た。
「俺とお前の……最後のデートだ。」
プツッ……ツー、ツー、ツー。
ピッ。
電話を切った。
沢渡先輩の声が、聞こえなくなったから。
気づけば目の前に、二階建ての一軒家が建っている。
私の家。
振り返れば、沢渡先輩が住む十階建てマンションが見える。
先輩は確か九階。
「柚子ちゃん……。」
その時、後ろから聞こえた声。
つまりは家の方から。
「菜子ちゃん……。」
私に声をかけたのは菜子ちゃんで、塀に体を預けているのを見ると、私を待っているようだった。