【完】向こう側の白鳥。
「……そんな目で、アイツ等のことなんか考えんなよ。」
「え……?」
「行くぞ!」
沢渡先輩が手を引く。
お会計時には、明らかに私達が注文した分より多い札一枚を差し出して、おつりも受け取らずに店を出た。
い、今の五千円札じゃなかった……?
……なんてことは、敢えて口に出さない。
「さ、沢渡先輩! どこに行くのですか?」
「どこって、デートだよ、デート! 柚子と俺は、恋人だろ!」
無邪気な笑顔。
その笑顔に釣られて連れて行かれたのは、ゲームセンター。
「あれやろうぜ!!」
先輩に誘われて、仕方なく対戦している格闘ゲーム。
絶対、私よりも楽しんでいるよ、この人。