【完】向こう側の白鳥。
「柚子、出来たぞ。」
「あ、はい。」
落書きコーナーから出て来た沢渡先輩に、一枚の紙を渡される。
その一枚に、撮った沢山の写真が分けられていた。
やっぱり私の顔は強張っていて、何だか恥ずかしい……。
先輩は格好良く撮れているのにな……。
と、その時、ふと気づいた。
……落書き、してない……?
一枚目の写真、二枚目の写真、
三枚目の写真、四枚目の写真、
五枚目の写真、六枚目の……。
「あ……。」
沢渡先輩が落書きしていたのは、六枚目の写真だけ。
書かれていたのは、カラフルなスタンプでも絵でもない。
ただ一色、黒で。
「逃げるな。」