【完】向こう側の白鳥。








その言葉、だけ。





「……俺は何も知らない。白鳥先輩とのことも、紫苑の気持ちも。」



そんなの、私も知らない。




「俺が聞いても、紫苑は一生答えないと思うんだ。何気にアイツ、頑固者だし。」



知ってる、頑固で甘えん坊で……。




「……紫苑の本音、聞いてやれよ。」



「え……?」





一ノ宮先輩の、本音を……?





「わ、私が聞いても一緒だとおも。」





「逃げるな。」





沢渡先輩のその一言に、大きく心臓が高鳴って、体がピシリと硬くなる。





「紫苑の奴……一度好きになった奴には相当一途なんだよ。それこそストーカーみたいに、ずっとどこかからか見守ってる。」



「それに……柚子も、気づいてんだろ……?」




気づいてる……何を……?


私は何も知らない……。








< 289 / 390 >

この作品をシェア

pagetop