【完】向こう側の白鳥。
「……お前、紫苑以外愛せねえよ。」
「何、言って……。」
本当、そう……一ノ宮先輩以外は愛せない。
だけど、それを認めるのは嫌だった。
「俺さ……もう、アイツが分かんねえよ……。」
「紫苑の奴、俺と柚子が付き合ってからも、毎日俺の家に来るんだぜ……。」
沢渡先輩は今にも崩れそうな顔で苦笑する。
先輩がその場に屈んだから、私からは綺麗な赤髪の頂上が見えた。
「もう、俺と柚子が付き合って一ヶ月以上も経つのに。」
「まだアイツ、俺の家のベランダから柚子の家を見てる。」
「ずっと、お前を見守ってるんだ。」
「そんなの、利用以上の想いがあるからだろ……?」
赤髪が揺れる。
沢渡先輩の特徴の赤髪。
根元だけが黒髪な赤髪。