【完】向こう側の白鳥。








なんだかんだ言っても、ここはゲームセンター。



周りはガヤガヤ


耳を澄まさなければ、沢渡先輩の声は聞こえない。





「柚子……。」



「嫌! 聞きたくない!!」





小さく聞こえる声を大声で遮って、耳を塞いだ。





……分かっている。



一ノ宮先輩の気持ちが、嘘だけじゃないこと。



心の底で、いつしか気がついていた。




それでも一ノ宮先輩を遠ざけるのは、許せないから。





「……私は、お姉ちゃんを裏切りたくないの……。」





口から零れた小さな声。





沢渡先輩の耳には届いたかな?



先輩には何かと驚かされることが多いから、こんな小さな声もきっと聞こえただろうな。








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