【完】向こう側の白鳥。








未だに屈んだままの、沢渡先輩の手を引いた。





「デートですよね。次の場所へ行きましょう、先輩。」




上手く笑えているかな、私。










私は一ノ宮先輩が好きだけど。


お姉ちゃんのことも好き。





昔、お姉ちゃんには好きな男の子がいた。


お姉ちゃんの同級生で、私の好きな人でもあった。



だけど彼も、平々凡々な私より容姿端麗なお姉ちゃんが好きだった。




それなら、私が手を引けば全て円満じゃない。



私さえ、心の内を隠せば。


みんなが笑える未来を得られる。





“結果論”



いつかの日、その彼が声にしたその言葉。








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