【完】向こう側の白鳥。








……いつも私は、我慢することだけを考えていた。





我が儘全部を飲み込む。



お母さんに来て欲しかった参観日も。


お姉ちゃんとお揃いの髪飾りが欲しかったことも。



大好きだった、初恋の彼も。





私は一人ぼっちだったから、そうやって身を引く以外に、人と距離感を保つ方法が分からなかった。





一歩離れて見れば、みんなは幸せそうだから。


これでいいんだって思っていた。





…………けれど……。





「本当、はっ……全部、欲しかった……!!」





「参観日にも来て欲しかったし、お姉ちゃんとお揃いの髪飾りも欲しかった!」



「彼のことだって、私の方が先に好きになったのに……!!」








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