【完】向こう側の白鳥。
「全部、全部……我が儘を、言いたかった……!」
十月中旬にもなれば、陽が沈むのも早くなって来ていた。
冷たい風が私の涙を乾かしていく。
聞こえる烏の鳴き声が、私の泣き声を掻き消す。
「もう脇役は、嫌なの……!」
心の奥底からの言葉。
自分が思っていた以上に、沢山の言葉が詰められていた。
口からドンドン出て来た醜い言葉に、自分でも驚く。
こんなにも思うほど……、私はずっと我慢をして生きて…………。
「……行けよ。」
「え……?」
「欲しいんだろ? 全部。……紫苑も。」
頭に思い浮かんだのは、あの日、花火に照らされた悲しそうな顔の一ノ宮先輩。