【完】向こう側の白鳥。
今更、と自分でも思うのが半分。
もう別れてから約二ヶ月も経つのに。
残りの半分は賭け。
一ノ宮先輩がまた、私の手を取ってくれるという期待。
沢渡先輩の横を通る。
「お前はもう、脇役じゃねえよ。」
聞こえた言葉。
「……ありがとうございます、“竜先輩”。」
前々から先輩に指摘されていた、名前呼び。
“沢渡先輩”で慣れていた今、どうしてもそう呼ぶことが出来なかった。
先輩には本当、感謝している。
泣いている時、いつも傍にいてくれて。
私なんかのことを、好きと言ってくれて。
そして何度も、背中を押してくれて。
その感謝を込めて、私は呼ぶ。
“竜先輩”