【完】向こう側の白鳥。
あんな悪役を演じた私だけど、本当のことを話せば、一ノ宮先輩は信じてくれるかな?
また私に、“好き”と言ってくれるかな?
……嘘でも良い。
嘘。
嘘じゃ嫌。
少しぐらいは好きでいて欲しいな。
一番は、お姉ちゃんでも良いから。
走る、走る。
夕方四時半。
空は茜色。
どこからか香る、金木犀の香り。
確かお母さんが大好きな、オレンジの花。
花言葉は“謙虚”。
道端に咲く、別名パープルハート。
正式名称は紫御殿(ムラサキゴテン)。
花言葉は“変わらぬ愛”。
「……やっぱり、私が一番じゃないと嫌かな。」
少し、我が儘になってみる。